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コラム - 第7回:共通プラットフォーム

コラム第7回:共通プラットフォーム

2004.11.04
松木則夫


 スマーテックが提供するソリューションのひとつである「SMART PP」は、産業技術総合研究所(産総研)が開発した「MZ Platform」技術を基盤としています。この技術を開発するに至った背景には、中小製造業向けのIT化のための共通プラットフォームという考え方がありました。

本業で活用できるIT

 かつては「安くてよいモノ」で世界的な競争力のあった中小製造業も、価格競争で勝ち残ることが困難になってきています。このため価格ではなく、例えば、高性能、高品質、機動性といった別な軸の競争力確保が必要と言われています。「情報通信技術(IT)の活用が重要」と叫ばれてはいるものの、それが電子メールの導入やホームページの設置、会計ソフトの導入ではなく、「中小製造業が本業で利用できる」ITとは何かという議論が意外に少ないのが現状です。中小製造業が、高い製造技術を生かせる、あるいは、さらに伸ばせるIT。 これが研究開発のメインテーマでした。

 しかし、中小製造業が現実に抱える課題は多種多様であり、それらの課題に個別に対応するITを提供することはほとんど不可能です。また、中小製造業の課題は、現在直面しているものよりも将来顕在化するもののほうが多いという性格もあり、せっかく提供した個別対応のITがすぐに陳腐化して役に立たなくなるという現実もありました。

 これらが出発点となって「共通プラットフォーム」という考え方が生まれました。

自らがIT化を実施

 製造業の『本業』支援のためのコンピュータシステムとしては、CAD、CAM、CAE、PDMなどがあります。大手の製造業においては、自社内で開発したシステムと、業務の再構成による市販システムの導入を組み合わせて生産性の向上を狙うのが一般的です。このためにはシステムのオーダーメード化(カスタマイズ)という作業が必要になります。典型的な製造業のIT活用です。

 ところが、中小製造業において、上記と同様なIT利用は次の理由で困難とされます。

(1) 外部委託したオーダーメードシステム利用には多額かつ継続的な投資が必要
(2) 業務が固定されているパッケージシステムは、試作などの多品種少量生産に向かない

 主に投資効果の面と柔軟性において、そもそも大企業向けに開発されたIT化を、そのまま中小製造業に適用できないことは明らかです。

 中小製造業には世界的に見て高精度・高品位の製造技術を持っている企業が多くあります。つまり、工学的な技術水準は高い。一方でソフトウエア開発も工学的な作業です。したがって、適切なソフトウエアの道具(ITツール)があれば、中小製造業が自らソフトウエア開発を含めた、主体的なIT利用が可能なのではないかと考えました。

 中小製造業自らがソフト開発するためのITツールを用意するという発想は、いまだに出てきていません。自ら業務システムを開発する基盤。それが「共通プラットフォーム」なのです。なるべく安価に、しかも自社の課題を自社で解決できるようなITツールを提供できれば、各社各様の個別解決策を打てるばかりでなく、海外や大企業との差別化を図ることができるのではないか。そんな想いで研究開発を進めています。

共通プラットフォームの適用

 仮想のスマテ製作所という会社での共通プラットフォームの適用例を考えて見ましょう。

 スマテ製作所は、レンズの加工用設備、測定器、冶工具の専用メーカ。売上は約10億円で従業員は合計で60名程度。シェアはこの分野で日本の6割を占めています。取引は200社。レンズに必要な精度である100±0.0009の品質を実現している素晴らしい会社です。

 このスマテ製作所の『個別事情』は、客先から指定された半径値に従って製品を作ると精度が出ないとうことです。理由は、レンズの研磨時に、研磨材によって、レンズと工具の間に隙間が生じるため。もちろん、スマテ製作所には、取引先への納入設備それぞれに、この隙間で生じる誤差の補正値についての情報の蓄積があり、自社開発のシステムに表形式で保存されています。

 スマテ製作所は廉価なCADシステムを利用しており、このデータの中に取引先ごとの補正値を反映するため、現在は、自社開発のシステムからのプリントアウトを見ながらCADに向かって数字を補正しながら設計しています。もちろん、最高級のCADをカスタマイズできれば解決可能ですが、コストに見合いません。

 ところが、共通プラットフォームを利用すると、取引先の情報と個々の補正値とCADの3つを連携するプログラムを開発することが、スマテ製作所自身で可能となります。必要なのは取引先別の設計データに補正値を反映させることだけ。それが安価にすぐできるのなら、この会社特有の課題は解決することになります。

 共通プラットフォームによる利点として、自ら作り上げることで必要な機能を持った適切な規模のソフトウエアが利用可能になるだけでなく、ノウハウの維持が可能となることも重要です。スマテ製作所の場合には、このような補正を実施して、精度に対する品質を維持していることが競争力の源でありノウハウ。そのノウハウのIT化を、外部に知られることなく実現できることが必要です。

中小製造業の競争力向上をバックアップ

 中小製造業には、このような形のノウハウが数多くあると思われます。共通プラットフォームのような基盤を提供することによって、中小製造業の競争力向上を強力にバックアップできたなら、この研究開発の目的が達成されたことになります。